窒素

夏の営業でテンパった俺がぶつぶつと
レットイットビーの替え歌で
働きたくないをつぶやきながら
ぐつぐつ煮えたぎり
のぼせてあるいていると
いつのまにか
アスファルトにへばりついたガムが
ビジネス靴にひっついたうえ
ウニーと伸びて延々と
俺のあとをついてきていた


そんなことは予想もしない
俺は
よし、もう辞めようと心にきめて
車に乗って
液体窒素をぶっかぶったすずしさを
えんえんと想像しつづけていると
頭痛の挙句に
ガムの精があらわれた
構造よききなさい
俺のねばりを
おまえの精液にあたえよう
俺の地に足のついた感覚を
お前にあたえよう


いらねー
絶対にいらねえと
断るまもなく
おれは根性をあたえられた
がんばれがんばってくれと
長渕つよしや
大事マンブラザーズバンド
などのうんざりするほどの
80sサウンドを聞かされ
カラオケで愛は勝つ
レパートリーになってしまった


こんなのは俺じゃねえ
俺はピストルズを歌いたいんだ
という俺の心の奥の憤りは
1991年のグランジムーブメントの
勃興まで
お預けにされた
あと三年
あと三年だちくしょう