息子の告発

sexyhoya_kouzou2005-10-01

NHKでやったのを大学時代にビデオで保存してからというもの
何回見たか解らない中国映画"息子の告発"を久しぶりに見る。
あらすじは父親を毒殺したのではないかと母親に疑惑を持った
息子が母親を告発する(当然共産中国なので殺人は死刑)
というあらすじだけでヘビーな映画なんだが映像がとにかく
綺麗だし、音楽も大友良英の物悲しくノスタルジーを誘う旋律が
最高なので昔っから気に入ってる作品なのだ。


究極的には母殺しの映画だと思っているし、実際母親は死刑で殺される
わけだ。母親は極めて情は深いが、情の深さゆえにドロドロした恋愛
沙汰に首を突っ込んでしまうわけで、息子は明らかに怜悧な教師である
父親の血を受け継いできわめて理性的な人間である。ある種理と情の
対決といっていいのだが、この対立構造に転化してしまうと、映画
自体が底が浅くなってしまう。というかつまらなくなる。情が勝つ
というか情の複雑さのほうに眼が行くからだ。ある評において母親の
女性性そのものをもってして息子や父親の男性性との比較で単純に
勝ち負けを決定してたバカがいたが、こんな事象で勝ち負けを決定
してどうする、というかする必要はない
最初から回想シーン含め息子の一人称で語られていく映画なので
父親も母親も息子が目撃した母親でしかない。しかし最後の方に
母親の共犯者の回想シーンが登場して母親像は一気にどろどろした
情念をもった女性像に変わり、物語は急展開していくのは確かだが
女性と男性の対比という観点に貶めるとどうも、弱くなる。


母親への不信と和解、そして別れというある種普遍の現代神話を
息子視点で描いているから最高なので訴訟という単純な対立
構造に縛られて見ると絶対にダメだ。


ちなみにこの画像が、ポスター。中国語題で"天国逆子"だが
いきなり子供時代の息子がすがりつく母親を蹴飛ばしてるシーンを
ポスターにするという最高ぶりである。