わたしがまだこどもだったとき
つまりわたしがおとこだったとき
山のじめじめしたスギゴケ
しきつめられた場所で
きいきいとキジが鳴くのを聞いていた


あれは空気を割った皹だ
そうして強烈なたてぶえや
ひゃんとした隙間風と同じ原理で
空気と空気の谷間を
毛の逆立った死霊がとおりぬけた


わたしは山葡萄をぐちゃぐちゃにして
肋骨のくぼみに紫色をつけた
蚊や蝿に悩まされながら
たくさんの悪霊に満たされながら
わたしは笑顔をうかべ


アレルギーはだれかにうつし
だれかのめんたまくりぬいて


おおきな殺害を企図したり
悲惨な破壊を計画したときに
たしかに、シロツメクサを集めて
猛毒を抽出する方法を知っていたのだ
どうやって死ぬんだい
と悪霊がきく
昼間は多分なんともないんだ
とわたしはこたえる


夜の間あいつらは死んでいて
ブヨにさされたように全身が痛む
声もだせないから母さんも気付かず
昼間だけすましたようになおって
嫌がっても仮病あつかいされて
あいつらは学校にいくんだ
いかなきゃあいけないんだ。


わたしは聖書をかざされたら
おそらくぐじょぐじょに溶け出して
酷い夜のようになるに違いない
そのうち月や星がまばたいて
したにはいっさいの灯りがみえない
まっくらのなか
キジが鳴くような声を出して
おそらくは皆が
意味のとおるようなことをいっている