職場へいくまでのかったるさのあいだに



職場へいくまでのかったるさを
感じている間に
髭をどう剃るかということと
スポーツカーについて考えている


エンジン音はテンプレート吹き替えの。
うぃー
と気合が入らない音で
ポルシェからGT-Rまで
歴代の名車を横から追走しながら
しだいに流線型をましていくのだが


そんなぼんやりとした連想をぶちこわすように
いやあ問題はここでどう爆発するかだろ
と客観が俺につぶやく
世界を滅ぼしたっていいんだし
女五十人とやってもいいんだ
神のさまざまな行いを
具現したってかまわないのだと


もうひとつの客観が
うぜぇ
とつぶやく


俺は出掛けのほうじ茶をすすり
いっそ収拾をつける必要も感じず
GT-Rに轢かせた
時速150キロで往路
時速80キロのバックで復路
女五十人の破片が
微細な風鈴になって脳内で
ジジジジジと鳴った


コンビニの袋をひっかけて
夜十時に戻ってきたときにも
ジッジッジッジッジッと
田んぼのほうから鳴り続けているのだった