俺とブラックホールのブルース

俺が地下鉄から靴を降ろすと
ブラックホールが光線の触手をのばして
おれの足をつかんでいた

やあ、ブラックホール
とおれがつぶやくと
ひどく重い砂袋が
前頭葉からどすどす降ってきた

地震と放送障害がまじって
読めない文字が
延々と頭の中に連なった。

おれはよろけて
駅のホームを転がり
煮えた水銀のように
ゆらゆら自分を見ていた

埃をスーツにつけ
地下鉄が通り過ぎ
トンネル効果で
形をようやく持った俺は

ブルース・リースタイルで
手も足も出ずにブラックホール
殴りあった
なかなかやるな
と俺はブラックホールを認めた

そしてついにはじまった
すべてのむかしの写真や
ふるぼけた両親の笑顔やらは
回転していく、故障した倍速
90回転
そうして、ビルの建築ラッシュ