sexyhoya_kouzou2005-11-29

おれの世界平和


俺が酒を飲み始めると世界平和が
俺の脳から離れた数十センチをとびまわっていた
よし、殺そうとつぶやきながら
ナイフを持った三千人の俺が
グサグサと人を刺していく
画鋲が数千個ささった体をかかえ
どんどんとみなにこやかになり
花園につつまれて
歌とよろこびに満ちた世界
おそらくはこの花は鉄でできているとか
そういうオチだろうとおもってつまんでみたが
じつにシナシナしたコスモス畑だ
ああそうか何をしても平和になるんだなと思った俺は
フォークソングを歌うまぬけの集団に
ガソリンで火をつけてやると
結局ただのこげあとになった
おそらく芽吹きとかそういうイメージが次に展開
するだろうと思って待っていても何も起こらず
さすがに不安になったおれは現実から逃避し
じっと目をつぶって夜を待った
静寂がつづいた
俺は罪を悔いることにした
水をひき、石庭をつくり
あらゆる岩をノミで削り
俺が火をつけて殺したまぬけの笑顔を
ひとつひとつ再現して庭に置いた
ついには五百に達した
やがて俺は老い
寒さにやられて熱を出した
浮かされて何度も許される夢を見ては
自分で否定した
俺が死に五百の石像が動き出し笑いあう夢を見たが
目をさますとただの石像だ
俺は庭に出た
池の中に月があった
月を拾おうとして死んだ李白を思い出した
飛び込んでみると浅くて足がついた
しかたなく部屋に戻りタバコを吸った
朝になっておきると近所の連中が残った夕飯を持ってきた
肉じゃがだった
おれは礼を言って肉じゃがをかぶりついて夜をまた待った
次に俺は罰を期待するようになった
五百の石像に縛られて焼かれる夢を見てにやけると
ただ熱を出しているだけだ
さらに待つと、俺は石像に苔がはえていることに気付いた
水を石像にかけ、年月で表情は崩れていった
やがて苔は五百の石像全体を覆った
俺はもうついにだめになり
死のうというときになり
苔が月に反射した
五百の石像すべては俺のつくった表情も
なにも無視しながら月に反射して光った
光苔だった
おれはようやくすべてよしと思い
酒を飲もうと茶碗に手を伸ばそうとして
筋肉が攣って逝った
部屋もほとんど草にまみれ
俺が苔に覆われるのもすぐだろう
俺の死体は腐乱していき
よりいっそう太陽に反射して輝いた