発酵、蒸散

醤油の匂いに酸化した油
ねっとりべたつく床に
はりついた背中があったまって
こんなぬるべたいことはねえ

さあ、停滞のはじまりだ
ぼおっとする何度目かの
人生というさび付いた軌道の上で
停止しつづける貨物列車
出るまでたまりつづける反吐

すっぱく苦いぶどう酒のそばで
くっちゃくっちゃと
おれの背中を舐める蝿

その無機質に見つめる数百の単眼の
ひとつだけが怒りと屈辱に燃えながら
壁にへばりついた夕日を見ている